「もうお歳だから手術はできません。」

「先が長くないので無理は辞めましょう。」

そんなセリフを言われ、諦めてしまう、諦めざるを得ないとご判断されたご家族を度々経験します。

「いやいやまだまだ若いですよ、たった10歳」「高齢イコール麻酔無理、ではないんですよ」

などと、個人的な主観も入ってしまいますが(いや相当主観ですが)、自分はそのようにお伝えしています。

「歳だからもういいです。」「無理な麻酔や手術は可哀想なのでやりたくないです。」と判断されるご家族も勿論いらっしゃいます。

決めるのはご家族。ご家族がそう判断されたならそれが正しい選択。だから無理強いはしません。状況も様々です。

同じ立場の者同士での席でも、そんな話題はよく出ます。

こんな状況の場合、僕ならこうする、私ならどうする。意見は必ず分かれます。何が正しいかなんて、答えが出ないエンドレス討論飲み会。

お酒が進むとトークも進み、感情論のぶつけ合いでヒートアップしてまたお酒が回り、翌日内容を半分も覚えていない・・・なんて事も、いや、ないですよ。

 

動物の生きる力、その限りない可能性と、獣医師の行動に移す勇気、ご家族の決断する勇気が、3つ揃った時、必ず結果はついてくると、私は信じています。

二十歳を過ぎた猫ちゃんの抜歯処置だって、18歳のわんちゃんのお腹を開ける手術だって、高齢だけどやるしかない、やってあげないと可哀想という状況なら、我々の立場でそこに背を向けてはいけない。だから、半分奇跡を信じての手術でも、ご家族が希望されれば、ご家族が決断されれば、やってきました。

動物の生命力に、復活を遂げる姿に、その都度、勇気と感動を、与えられて来ました。

(全てがうまくいくわけではありません。状況は本当に様々です。)

 

今回の手術は、感染したお目めが弾けてしまった19歳の猫ちゃん、慢性腎不全。眼球摘出をしてあげないと痛くて可哀想な状況。

飼い主様は、すぐに我々に任せる決断をして下さいました。数日の点滴治療の後、無事手術を乗り越え、片目でパッチリと私を睨んでくれる猫ちゃん。

「片目、取ったわね。でも、痛みも不快感も一緒に取れた気がするわ。。なんでかしら。あんたお年寄りに何したのよ?」

そう言って、ちゅーるを美味しそうに平らげてくれる猫ちゃん。

手術を乗り越えてくれてありがとう。感動をありがとう。

 

人間も同じだなと思います。

もう歳だから無理よ。そう思ってしまったらそれまで。

いくつになってもスポーツだって旅行だって出来る。100歳過ぎても短距離走に出るお年寄りの大会だってあります。

市民プールに行けばお年寄りがバタフライで泳いでいます。

年齢は現実でも、年齢の壁は自分で作ってしまうもの。

動物は、決して自分の年齢を数えて諦めたりしません。壁なんて、作りません。

そのたくましい生き方に、いつも脱帽です。

 

そんな自分も、お肌の衰えにちょっとビビっているこのごろです・・・。

 

写真は親友がプレゼントしてくれました。

悪口ばかりブログに書いているようですが、

そんなくまでも、本人そっくりのマグに、

年甲斐も無く、胸キュンしました。

くまは、年齢を聞いても答えてくれません。

「オレの知ったことか」と。