年の瀬、「一年があっという間だった〜」と、先生は嘆いている。

一瞬で過ぎただの、また歳をとっただの、この前正月迎えたばっかりなのにだの、うるさい女だ。

なんで年末になると人間はみな同じようなことを言うのだ。

一年という単位も、年末の意味も、オレにはわからない。

ただ、トリミングが慌ただしいようで、犬さまの出入りが激しい。

オレは、行き場を失う。

そして、追い討ちをかけるかのように、仲良し二匹猫さまがホテルに来た。

オレの部屋が狭くなった。

しかも一人やたら怒っている。オレは何もしていないぞ。

そんなおこりんぼ相手に先生は、

「背中にミッキーちゃんがいる〜♡」

と興奮気味にかわいがっている。

お気軽なヤツだ。

また咬まれるぞ。

 

 

しかもついでに、またあいつが来ていた。カイトだ。

今の飼い主スタッフに抱かれて現れた。

甘え上手なくせものめ。

なんでオレにだけシャーと言うんだ?

なんでみんなアイツにちやほやするんだ。

オレは、白より黒の方が好きだ。

締まっていてカッコいい。

でもスタッフは最近オレをデブ呼ばわりする。

どいつもこいつも・・・。

 

カイトは、両目ともはじけて汁が出て、先生に手術されて、目玉変なのに、

先生に「目が可愛い〜」とグリグリ頭なでまわされている。

アイツ、なんで無抵抗なんだ?

先生のハグは堪え難い馬鹿力なのに、文句一つ言わない。

なかなか離さないのに、暴れもしない。

先生を調子に乗せるなよ。

バカなヤツめ。

 

 

しかも、オレの定位置の休憩場所で寝やがる。

誰か、コイツをどかしてくれ。

早く家帰れ。